エベレスト登頂50周年記念

もくじ

1.はじめに

今年はエベレストの初登頂から50年が過ぎ、イギリスでは式典も行われた事であろう。日本では余り話題にならなかったが、エベレストのサウスコル8000mの高さからスキーで滑り降りると言う、世界に冠たる大冒険をした三浦雄一郎さんが、70歳の世界最高齢でエベレストに登頂し、50周年を祝った事位しか話題も無かったように思う。そこで少しエベレストの初登頂について書いてみたい。

2.エベレストへの遠征と登頂

エベレストに初めて遠征しアッタクしたのは1921年(大正10年)、イギリス隊である。以来イギリスは9回の遠征隊を送り出したが、登頂出来なかった。3回目の遠征では、「何故山に登るのですか」と言う新聞記者の質問に対し「そこに山が在るからだ」と答えたと言う、伝説の登山家ジョージ・マロリーとアンドリュー・アービンが頂上付近で消息を絶っている。又イギリス隊初登頂の前年、1952年(昭和27年)にはスイス隊により春、秋と2度に渡りアタックされたが、エベレストはその頂きを明け渡さなかった。イギリス隊9回、スイス隊2回、合計11回のアッタクもエベレストには通じなかった。そしてイギリス隊第10回目の遠征とエリザベス女王殿下の戴冠式に合わせた様に1953年5月29日午前11時30分、ついにエベレストはその頂きをイギリス隊に明け渡した。その模様は映画となり、世界に送られ我々世代の多くの人々は見ていると思う。

3.初登頂の裏に

戦前8回までの遠征は、全てチッベト側の北面からアタックして失敗しており、9回目はイギリスの著名な登山家エリック・シプトンが、ネパール側のクーンブ氷河を偵察し、南面からのルートを見つけ、第10回目の遠征の初登頂につながっている。ルート発見の第9回遠征隊長シプトンは、自分の主張として小規模な登山隊で初登頂を目差したかったが、エリザベス女王殿下の戴冠式の為にも何としても初登頂したい、イギリスアルペンクラブの大規模遠征隊の方針と意見が合わず降ろされてしまう。隊長は軍人であり登山家であるジョン・ハントに変更されてしまい、ハント隊長が栄光に浴する事となる。初登頂者エドモンド・ヒラリーはルート発見の第9回遠征にも参加している。

4.エベレストの歴史における日本人の活躍

エベレストでは日本人も多くの世界初の記録を打立てている。エベレストは3本の山稜と3面の壁から成り立っている。これらの稜、壁の初登攀はアルピニストにとって大きな目標であった。以下に日本人の記録を示します。

1)1970年  三浦雄一郎、8000mサウスコルよりスキー滑降
2)1973年  世界初の秋期登頂
3)1975年  世界初の女性の登頂(田部井淳子)
4)1980年  北壁の初登攀
5)1988年  世界初の北稜から南東稜への縦走(山田 昇)
6)1993年  冬期南西壁の初登攀 (6人で18日間の速さ)
7)1995年  北東稜の完全初登攀
8)2003年  三浦雄一郎、70歳世界最高齢の登頂

中でも北壁の初登攀、冬季南西壁の初登攀長大な北東稜の初登攀は世界に誇るべきハイレベルな記録である。

登攀写真

5.エベレスト初登頂に関する出版本

エベレストの初登頂に関係し、多くの出版物が出たと思うが、我々知っている。
代表的な本は以下の通りである。いずれもイギリスのロンドンにて出版されており、もちろん本は英文である。


1)THE ASCENTO OF EVEREST 
著者:ジョン・ハント隊長この本は登山隊の公式登山記録報告として出版されたが、内容は大変良く書かれており興味深く読ませてもらった。もちろん和訳本で読みました。ASCENTO-日本語で「登る」


2)JOHN HUNT  OUR EVEREST ADVENTURE  
出版:ヒマラヤ協会、王立英国地学協会、アルパインクラブ
「ジョン・ハント隊長によるカトマンズから山頂までの写真による記録」という副題がついている通り写真と文章による登山記録である。この本はTHE ASCENTO OF EVERESTの説明案内書として出版された。


3)THE PICTURE OF EVEREST 出版:ヒマラヤ協会、王立英国地学協会、アルパインクラブジョン・ハント隊長の序文による、公式カラー写真集である。上記2)項めのも写真が多いが白黒写真であり、この本はカラー写真集となっている。当時カラー写真集は少なかった。


4)SOUTH COL EVEREST   
著者:ウイルフリッド・ノイス登山隊員であったノイスは初めてサウスコルのルートを開き、サウスコルに初めて立った憂秀な登山家である。かつ毎日登山記録を書いたと言う気力の持ち主でもある。登山中における隊員の様々な人間的記録を書き続けたが、その纏めがこの本である。ハント隊長も先の本を書くに当たりノイスの記録に大変助けられたとのコメントを本の中に書いている。山頂に立てなかったノイスにはサウスコルがエベレストの頂きだったのだろうか。


5)HIGH ADVENTURE BY EDMUND HILLARY  
著者:エドモンド・ヒラリーこの本はヒラリーのエヴェレスト登頂記録である。以上5冊がイギリス・ロンドンで初出版された英文原書である。
この英文原書を和訳し、日本で3冊の本が出版された。以下がその本である。
1)エベレスト登頂 (THE ASCENT OF EVEREST)
2)エベレストその人間的記録 (SOUTH COL EVEREST)
3)わがエベレスト (HIGH ADVENTURE BY E HILLARY)

私はこれら8冊の本の内7冊が書棚にあるが、決して無理に買い集めたわけではない。その都度気に入り買い集めたので、価格も安く手に入れる事が出来た。持っていない1冊は、ヒラリーの「HIGH ADVENTURE BY E HILLARY」である。今にして残念なのは、過って神田の古書会館の即売会にヒラリーのサイン入りのこの本が出ていたが、8万5千円と高くおまけに英文原書なので、日本語訳本を持っていた私は、ページをパラパラめくっただけで、買う気も無く見過ごしてしまった。この文章を纏めた今は、次回お目に懸かったら多少買う気になってきた。

参考書籍

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