奥鬼怒の秘湯 加仁湯
もくじ
「加仁湯」の歴史
文政年間(1818年~1831年)の頃から、沢蟹が無数に生息しているところに豊富な温泉が湧出しているので、ここを「蟹湯」と名付けて、村人は湯治をしていたと言われている。
その後、明治35年(1902年)の未曾有の台風に遭遇し、土石流により、埋没されていた。
昭和2年(1927年)、小松峰老人(「加仁湯」初代湯守・小松長久の祖父)が鹿の足跡を追って、「蟹湯」にくると、鹿の足跡に白い湯花が付着しているのを見て、ここだ「蟹湯」だと天に祈り、自ら手掘りで発掘し、温泉源につきあたったと言われている。
昭和9年(1934年)小松峰老人と小松タケ(長久の母)がこの地に、木造二階建を建築した。
昭和10年(1935年)小松長久が湯守になるが、陸軍軍人となったりして、その後無人小屋となる。
昭和25年(1950年)長久は、この間、山岳愛好家達により、囲炉裏端のゴザの下に宿泊謝礼が置かれていて、留守が護られ、管理利用されており、その素晴らしい行為に感激し、山岳愛好者から、「仁」(人の道)を加えられたことから、「加仁湯」と改名し、喜久代(長久の妻)とともに再建に乗り出した。
当時の温泉の湧出量は毎分16ℓで源泉温度は42℃であった。
そのため、来る日も来る日もツルハシで温泉の発掘に全精力を注いでいたが、徒労に終わっていた。
しかし、ある夕暮れ時に突然湯煙りとともに現在の高温温泉が自然湧出した。
それから、妻と37日間自然の岩をツルハシで掘り続けて、現在の露天風呂を完成させた。
その後も次から次へと温泉が湧出し、現在のような豊富な温泉に恵まれたという。
「加仁湯は、未来永劫にわたり人の道を遵守し常に感謝と奉仕の精神を忘るることなくお客様は株主さんであるに徹し連帯感溢るる環境づくりに専念し繁栄を期する」と石碑に刻まれている。
加仁湯の温泉
「岩の湯」「黄金の湯」「たけの湯」「奥鬼怒4号」「崖の湯」の5種類。
元祖の「岩の湯」、第三露天風呂の「黄金の湯」、硫黄分をほぼ含まない「たけの湯」の温泉分析書の主な点を紹介。
温泉分析書(岩の湯) 含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(硫化水素型)
2020年 | 1979年 |
無色澄明、苦味のち弱塩味、硫化水素臭 | ほとんど無色澄明、塩味で硫化水素臭 |
源泉60.8℃(気温0℃) | 源泉54.8℃(気温20℃) |
湧出量8.2ℓ/min 動力揚湯 | 湧出量35ℓ/min 掘削自噴 |
Ph6.7 | Ph6.2 |
溶存物質1562mg | 溶存物質1436mg |
硫化水素イオン4.3mg | 硫化水素イオン1.4mg |
チオ硫酸イオン5.7mg | チオ硫酸イオン0.1mg |
遊離硫化水素9.6mg | 遊離硫化水素10.0mg |
ナトリウムイオン405.6mg | ナトリウムイオン401.4mg |
塩化物イオン486.4mg | 塩素イオン501.7mg |
炭酸水素イオン372.5mg | 炭酸水素イオン304.2mg |
遊離二酸化炭素124.7mg | 遊離二酸化炭素142.3mg |
メタけい酸133.8mg | メタけい酸95.3mg |
メタほう酸36.7mg | メタほう酸42.1mg |
温泉分析書
黄金の湯 含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(硫化水素型) | たけの湯 ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 |
2021年 | 2021年 |
無色澄明、微苦味のち微塩味、硫化水素臭 | 無色澄明、微塩味で無臭 |
源泉45.3℃(気温0℃) | 源泉55.1℃(気温0℃) |
湧出量179.3ℓ/min 動力揚湯 | 湧出量45.1ℓ/min 掘削自噴 |
Ph6.6 | Ph6.8 |
溶存物質1003mg | 溶存物質1118mg |
硫化水素イオン2.5mg | 硫化水素イオン0.1mg |
チオ硫酸イオン4.1mg | チオ硫酸イオン0.0mg |
遊離硫化水素7.2mg | 遊離硫化水素0.1mg |
ナトリウムイオン268.5mg | ナトリウムイオン265.0mg |
塩化物イオン314.3mg | 塩化物イオン501.7mg |
炭酸水素イオン195.8mg | 炭酸水素イオン328.4mg |
遊離二酸化炭素82.5mg | 遊離二酸化炭素87.3mg |
メタけい酸106.7mg | メタけい酸116.0mg |
メタほう酸23.9mg | メタほう酸22.8mg |
岩の湯と黄金の湯
含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(硫化水素型)
痰をだしやすくする(痰の湯)ので、慢性気管支拡張症等に効き、抹消毛細血管・冠状動脈・脳動脈を拡張させ、シミ予防効果があり、殺菌作用があり、肌の角質をとる作用(クレンジングの湯)と肌の乾燥を防ぐ作用(温まりの湯)もあり、とても良い温泉!ただ、硫黄泉・硫化水素型なので硫黄の臭いや肌に少しピリッとした感じがあり、またどちらかというと湯あたりしやすい温泉なので、気になる方は「たけの湯」がベター。
たけの湯
殺菌作用があり、肌の角質をとる作用(クレンジングの湯)と肌の乾燥を防ぐ作用(温まりの湯)がある。
メタけい酸は、肌の角質のバランスを保つセラミドの生成を助けてくれるため、肌を乾燥から守ってくれる。また、肌や髪などを生成するために必要なミネラルであるケイ素が35.9%含まれている。
メタほう酸は、殺菌・洗浄作用があり、にきびに効果的とされている。
肌の敏感な方でも気兼ねなく入れて、湯あたりしにくい温泉。
入浴の感想
一番良かったのが、第三露天風呂!
「黄金の湯」で、温度が体感で38℃くらいだったので、ゆっくり長く入れた。
硫化水素の臭い、体に良さそうな感じがして、素敵。
雪が舞い散る中、標高1400mで白銀の世界に浸りゆったり、最高だった☆
硫化水素型の硫黄泉は、流れ出ると白濁する傾向にあるのだが、午後早い時間には透明だった。しかし、日が暮れてからは白濁したので、両方に浸かれて、得した気分を味わった。
お湯は、少し刺激があり、目がちょっとしみる感じはあったが、玉川温泉の源泉100%の目潰し攻撃と比べてみると気のせいかなと思う程度。
脱衣所が寒いので、30分浸かってても着替える瞬間はちょっと寒かった。
「ロマンの湯のきき湯」は、5種類の温泉が個別浴槽で味わえるまさにロマン溢れる浴場だ。
硫黄泉の4種類は、違いは温度くらいしかわからなかった。一番熱いのは、体感43℃くらいはあったかな。長くは入れなかった。
「たけの湯」の浴槽のお湯は、雪が積もっていて氷がはっていた。
無理矢理入ろうとバチーンしたら、拳が負けた。。。
第二露天風呂には、サンダルに履き替えて、ちょっと歩いて行く感じ。
通路には凍結防止用にお湯が流されている。
このエリアには、「カモシカの湯」がある。
「たけの湯」を独占できる浴槽だ。
お湯の温度もちょうど良く、二人は入れる広さの浴槽なので、一人でゆったりと入れる。
お湯は、ちょっとヌルリ感があり、肌に良さそう。
他の4種類の温泉に入ったあと、締めでここに入れば保湿効果もよりよくなりそう。
最後に
奥鬼怒4湯の加仁湯温泉、沢沿いで、雪景色、標高1400mと転地効果も抜群!
源泉が5種類あり、色々な入り方もできる。
食事は、少し塩味が強い感じがしたけど、地のものがほとんどですべて美味しく頂けた。
雪見風呂・乳白色・硫化水素臭、最高☆
また是非、来年も宿泊して堪能したい。
記:ryuji