日本文化の理解と維持
第二次世界大戦中にフランス人ポール・グローデル氏は演説の中で「世界でどうしても生き延びてほしい民族を上げるとしたら、日本民族である」と、敵国である日本民族についてこう語った。同氏は外交官であり、劇作家でもあり、詩人であった。学校の同級生にはロマン・ロランがいたし、親しい友人に彫刻家のロダンがいた。同氏はフランスの駐日大使として来日中に関東大震災に合い、横浜から東京まで歩いていく中で、多くの日本人の厳しい中での冷静で謙虚な対応に感動したという。まだ貧しい民族であるが、心は高貴であると語ってくれている。戦前の日本人は教養ある外国人にこの様に理解されていたが、戦後は情けないことにエコノミックアニマルと云われた時代もあった。現代の我々は戦前教育による人間性には及ばない事を示しており、戦前を悪とみなす考えは止めなくてはならない。(東日本大震災では日本人の対応は世界から賞賛され、日本人の素晴らしいメンタルはまだ残っている)
アメリカの国際政治評論家ハンチントン氏は「文明の衝突」という著書の中で、世界を8つの文明圏に分けている。西欧・イスラム・中国・日本・ヒンドゥー(インド)・スラブ・ラテンアメリカ・アフリカである。中国は仏教、儒教、共産圏として語られ、日本のみが一国で一文明として語られている。日本文明は世界のどの文明圏にも属さない独自の文明である。日本文明は古代から営々と営まれた文明であり、その中に中国文化や韓国文化を取り込んで消化し、日本文明に取り入れ独自の日本文明を築いてきた。我々はもっと世界に誇るべき日本文化を堂々と誇るべきである。
こうした独自の日本の文化を愛してくれたのが、アメリカの日本文学研究者ドナルド・キーン氏である。同氏はノーベル賞の川端康成や三島由紀夫など、多くの日本文学作品を西欧の英語圏世界に紹介してくれた日本文学界の恩人である。晩年同氏は国籍まで変え、日本人となり京都に住み活動した。私も同氏の著書である「渡辺崋山」を読み、江戸時代の日本文化に対する深く幅広い知識と理解に驚いた。我々は日本文化の素晴らしさを、もっと理解する必要がある。戦後教育を受けた我々は、敗戦により日本文化を悪とみなす米国により作られた教育方針に余りにも毒されている。また同時に昭和26年に独立してからは、左翼主義による日本文化悪者説により、戦前の歴史教育をしない日教組の教育により、明治以降の近代の歴史を全く理解していない。これは明らかなる日本文化の衰退を意味する。
60歳以前の世代は戦後理論の考え方だけで物を考え、日本文化の素晴らしさを考えに入れないで、戦後の考えのみの片手落ちな考えで物事を理解してしまう。ドナルド・キーン氏は現代日本人の弱点は「歴史をよく理解しない事である」と語っている。我々戦後教育を受けた世代は、世界に誇るべき日本文化をもっと知り理解し、日本人として誇りをもって生きる必要がある。国土防衛は当たり前だが、日本文化の防衛も真剣に考える必要があると思います。