歩き遍路 11日目・13日目・14日目・15日目
もくじ
9月23日(木)11日目
室戸岬を越えて、安芸郡安田町から山間部を登り、27番神峯寺へんろ納経する。
江戸川区のF川さんと偶然会い、彼は今日を区切りとし、東京へ戻る予定と聞いて、再会と別れが訪れた。
昨日に続き、この山を降るとひたすら国道を35km以上歩くことになる。
8日目の宿「波流月」であった女性から、『お遍路は瞑想ができて良いですね』と言われたことを思い出し、歩きながら『瞑想』にトライしてみる。自らの心を落ち着かせ、自身の身体を細部にわたるまで敏感に…繊細に…感じたことを考える。というアドバイスだった。
……足の裏が熱いし、痛え、膝も重だるく痛い。ふくらはぎは、疲労感を感じる。そして太腿も…。
ザックの重みで肩も痛え…。喉乾いた…。甘いモノを補給するのは良いが、口の中がべたついてしょうがねえ。
いや、これ瞑想なの??
初日に感じたことと何にも変わらんし、いつも登山でも感じてるし…。
山の会の若大将「沼P」もアドバイスもらうが、むずい。
まだまだ修行が足りないようでした。
ただ、歩き続けて8時間を越えたあたりから、寄り目なのか、視界が定まらないまま痛みが消えて、考えているけど全てが上の空状態が1時間近く続いた。
これが瞑想なのか、単なる疲労の蓄積なのか、まだわかりません。
に
9月25日(土)13日目
高知に入り、カツオのたたき!わら焼き!柑橘系のブシュカンでチューハイ!
期待していたが、お遍路は札所を高知市街地を避けるようにお寺がある。
それでも居酒屋くらいは…6km近いようで歩くと1時間…往復で2時間。
これまで8時間以上まるまる歩いてきて、35km。
足も膝も肩も痛え。そして汗だくのザックがとにかく臭い…。
素泊まり予約した宿で缶チューハイとカツオのお菓子で我慢した。
9月26日(日)14日目
桂浜に着いた!龍馬来たぜよ!と挨拶を済ませたまま、33番雪蹊寺に向かう。
ここにも『廃仏毀釈』という明治政府のクソみたいな政治の犠牲になってるお地蔵さんがいる。
土着信仰も蔑ろにした政策は、本当にアホかと。
政治的なことは詳しくはわからないけど、残念すぎる日本があったことは事実らしい。
9月27日(月)15日目
土佐市の塚地峠の麓に休憩所がある。
屋根付きでベンチがあって、自販機があるのは、中々無い恵まれた休憩所。
すでに27km歩いてる自分にとっては、ありがたい回復スポットになる。自販機で小銭を出そうとマゴマゴしていたら、突然、おっさんに「お接待だから受け取れ」と、150円差し出してきた。
おっさんは、髪は長いのに前頭部は禿げてるし、無精髭を伸ばしたおっさん、更に少しシャクレてる。自分の経験則から、おっさんに対する警戒度が上がり、
『コカコーラはスマホ決済できるんで、ありがたいですが…』
と、やんわり断りを入れると「お接待は受けなければあかん!」と言う。
たしかに、お遍路作法としてドリルに書いてあった。
お礼に納経札を受け取ってもらい、そのお金で、桃の天然水をいただいた。
おじさんは、機嫌を良くした様子で、
「オレも現実逃避で、一度お遍路さんしちょったんよ。そらたいそうきびしかったで。」と勝手に話し出すので、iQOSを吸いながら、会釈して桃の天然水をガブ飲みした。
「オレな、徳島あたりからお遍路を始めたころ、仕事の延長のように、いつまでに何処まで。明日は何時から…と、決めながら回っとったんよ。そしたらな、ふと小学生とか中学生とかガキが『おはようございます』とか挨拶してくるんよ。オレはしかめっ面しながら、眉間に皺寄せて歩いて会釈だけはしとった。…ただな、何でガキらはちゃんと声出して挨拶してるのに、オレはちゃんと挨拶せんかったんか。って高知に入って気付いたんや。
そして、いつ迄に何処まで進めるか…ちゃうやろ。お遍路は仕事ちゃう。何を感じるのかっちゅうことやね…。偉そうにすまんね。まだまだ先は長いき、気いつけてな。」と浮浪者のようなおっさんは、迎えに来ていた軽自動車に乗り込んで消えていった。
オレはiQOSを消して、立ち上がって深々と頭を下げて見送った。
そこから、トンネル道があるが、あえて旧へんろ道の峠に向かう。
すると、1時間ほど歩くと、農家風のおっさんが嬉しそうに「お遍路さんは、数ヶ月ぶりやな。休憩してくか?」と、竹で出来た手作りの腰掛けの長椅子を手治してた様子で、誘導する。
「ここは、特等席やで。春には椿も桜も満開で、ごっつ綺麗やで。」とまたまた勝手に話し出す。
このおっさんが言うには、トンネルが開発されたことで、便利になり、峠を越える人が少なくなってしまった。それでも毎年のように「この景色が見たい」って人もいるから、ずっと手入れを続けてるらしい。土佐ミカンを差し出して、食えと言う。
お礼の納経札を私ながら思う。ミカンすげー美味い。
今日は50km歩いたけど、峠道を何度も超えると足がすげーだる思い。
宿について、おっさんを思い出すと泣けてくる。
記:お遍路さん