歩き遍路 31日目

10月14日(木)31日目

 

「三角寺」に向かう道中、お遍路の先達にあった。
もう10年以上回り続けてる方と5年程回り続けている方の2人と立て続けに会った。
共に10分にも満たない会話だったけど、色々考えさせられた。

5年程の先達は、65歳位の大型運転手にいそうなガラッパチ感がある親父。
「真新しい装束やな…(巡礼は)初めてか?」
「俺はもう5年程回っとるが20年間回り続けてる人もおるし、まだまだやで。」
「ただ、最近、思うんやけど20年回ってる奴も含めて、程度が低く感じるんや。そら、何周も歩いて野宿して回ってるので体力も気力も凄いとは思う。ただ、『智』が無い。なんかバランスが悪いんよな。まぁ、俺もそうやけどな。がははは。」
「あんたは宿に泊まってるの?そら負けやで。金使うて巡礼してるんじゃ、まだまだ赤子や。」
と、何となく否定された。
「勝ち負けで、巡礼してるのか?」と尋ねると、「あそこにいる10年以上回り続けてる人も同じように言いよる。勝ち負けじゃ無いって。色々な人がおるからなぁ、母親を金属バットで殴り殺した奴も巡礼しとるし、まぁ、お遍路は色々だわ。」
「俺はサカ打ち(逆打ち)してる  から、ほな行くで。」と力強く立ち去って行った。

次に、10年以上回り続けて人は、恐らく50歳代半ばくらい…痩せてておっとりした口調で話す。
「私が10年以上も四国回ってる理由は、四国が都合が良いからですよ。」
「日本の各地をこうやって回ってると、浮浪者と間違えられて、滋賀県で1日に7回も警察に職務質問されました。でも、四国は『巡礼』という文化が根付いているで、受け入れてもらえるんです。」
「こうやって回ってると、非現実的ですよね。更に、色んな人に会う。『お大師様にあった!』という人もいるし、四国巡礼のバリバリの格好して歩きながら、宗教の話を全否定してる人など様々です。」
と、歩きながら話していた。
この人の話しはとても聞きやすいので、もう少し話しを聞いてみたかったが、数少ない公園トイレに立ち寄りたかったので別れの挨拶をした。
トイレを出て、5時間ほど歩く間、その先達と会うことはなかった。
しかし、疑問がたくさん湧いてきた。
「やってることは、ずっと現実逃避じゃ無いのか?」
「非現実というけど、10年以上回ってるあなたにとっては、日常になってはいないのか…」
「いや、そもそもどうやって食ってるの?家族はいないの?」
「宗教観に魅せられたのであれば、どうして出家するなり、仏門に入らないの?」
「浮浪者と間違えられるって、いやあなたは浮浪者ですよね?」
次々と疑問が湧いてくる。ただ、この疑問は、相手に対する否定が多い…とてもぶつけることは出来ない。

私に「智」が無いばかりに、聞くことさえ出来なかった。

記:お遍路さん

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